(26日、プロ野球 ソフトバンク6―5ロッテ)
2試合連続の延長戦に決着をつける鋭いライナーが左中間方向に抜けていく。
十回1死満塁。ソフトバンクの松田は、打席に入る前に工藤監督から「信じてるぞ」とハッパをかけられていた。「勇気とパワーをもらった」と、追い込まれながら外角の変化球を振り抜く。自身9度目のサヨナラ打が外野に抜けるのを見届けると、一塁を回り、仲間から手荒く祝福された。
終盤まで劣勢ムードだったが、4点を追う九回にロッテの守護神の内を攻め立てた。1点を返し、なお2死二、三塁で上林が同点3ランを右中間テラス席に運んだ。22歳の起死回生の一発で引き戻した流れを、ホークスの誇る元気印が劇的な一打で締めくくった。
ここまで1分けを挟む4連敗。2日前には5時間45分の延長戦を戦い抜き、負ければ4月以来の借金生活だった。しかも、この日は主砲の柳田が軽度の首のねんざで今季初めて欠場していた。チームの苦境だからこそ、松田も気合を入れ直していた。「中心でやってくれているのは柳田。いない時でも頑張れたのは総合力。みんなで力を合わせないと順位は上げられない」
チームは劇的勝利でロッテと入れ替わり、3位に浮上した。工藤監督も選手の奮起を手放しでたたえた。「最後まであきらめない思いが出ていた。この粘りが選手の力。その力を信じてやっていってほしい」。昨季の王者が底力を見せつけた。(甲斐弘史)