中国北西部の甘粛省蘭州市が、名物ラーメンの海外進出に取り組んでいる。習近平(シーチンピン)政権が提唱するシルクロード経済圏構想「一帯一路」に便乗し、目指すは「世界一のファストフード」だ。
黄河が流れる市の中心から車で20分ほど。「蘭州牛肉麺職業訓練センター」で、約30人の受講生が麺の打ち方を習っていた。
「もっと滑らかに、素早く手を動かして」。講師に言われながらウズベキスタン人のハンナさん(26)は小麦粉をこねた塊を持ち、一気に両手を広げて延ばした。途中で麺が切れてしまうと、初めからやり直しだ。
蘭州ラーメンは牛骨と様々なスパイスで作った澄んだスープと手打ち麺、そして煮込んだ牛肉を具として添えるのが特徴だ。これらの作り方をセンターで学ぶことができる。数日間の短期体験から1カ月の住み込みコースまであり、2006年の開設後、約3万人が学んだ。
運営するのは、蘭州ラーメンのチェーン店を展開する「金味徳」。担当者の喬勇さん(41)によると、13年に習国家主席が一帯一路政策を提唱して以降、留学生や旅行者の外国人の受講者が増えた。キルギスやドバイ、フランスや米国などで、帰国して店を開く卒業生もいる。
ハンナさんは蘭州大学で中国語を学ぶ留学生で、同級生のキルギス人のアイリさん(26)と一緒に受講した。アイリさんは「故郷の両親に中国の料理を味わってほしくて、蘭州ラーメンを勉強しようと思った。麺もスープも複雑で難しい」と話す。
金味徳は今年から海外出店を本格化させた。4月には東京・六本木に日本1号店を出店。オーストラリアにも店を構え、米国とイタリアへの出店計画を進める。喬さんは「蘭州人は2日出張するだけで故郷のラーメンの味が恋しくなる。それだけ人の心をつかむ力があり、世界で十分戦える」と話す。
創業約60年、蘭州ラーメンの老舗「馬子禄」は昨年8月、東京・神保町に初の海外店を出した。3代目の馬汀さん(41)は開業直後の東京店を視察し、客が長蛇の列で開店を待つのを見て手応えを感じた。今年は香港とシンガポールへの出店を予定する。「いずれも美食の街だ。競い合って味を磨き、蘭州ラーメンを世界ブランドに育てたい」
1分ほどで完成
蘭州ラーメンは、もともと屋台料理として地元で広まった。
蘭州牛肉ラーメン業協会によると、1915年、イスラム教を信仰する少数民族・回族の馬保子という人物が街頭で提供したのが発祥とされる。地元の朝食として定着し、早朝6時から開く店が多い。値段は1杯7元(約120円)。注文と同時に麺をゆでて完成まで1分ほど。「中式快餐」(中国式ファストフード)と呼ばれるゆえんだ。
その「国際化」が、習政権が進…