広島は6日、被爆73年となる「原爆の日」を迎えた。広島市中区の平和記念公園で午前8時から平和記念式典が開かれ、原爆投下時刻の8時15分に参列者が黙禱(もくとう)した。広島市の松井一実(かずみ)市長は「平和宣言」を読み上げ、昨年7月に国連で採択された核兵器禁止条約に言及。核兵器のない世界の実現に向けて国際社会に対話と協調を促す役割を日本政府に求めた。これに対し、安倍晋三首相は昨年に続き、あいさつで条約に触れなかった。
被爆と被災、重なる思い 8月6日、広島の特別な一日
被爆者は今、核兵器と人類の関係は…核といのちを考える
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核禁条約をめぐっては、採択の牽引(けんいん)役を担った国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN(アイキャン))が昨年末ノーベル平和賞を受賞。今月5日までにメキシコやオーストリアなど計14カ国が批准した。「唯一の戦争被爆国」を掲げる日本政府の対応が注目されてきたが、条約の交渉会議に参加せず、採択時に反対票を投じている。
安倍首相はこの日の式典あいさつで「近年、核軍縮の進め方について、各国の考え方の違いが顕在化している」と指摘。日本政府として非核三原則を堅持し、核兵器国と非核兵器国の橋渡しに努め、国際社会の取り組みを主導するとの決意を述べた。
朝鮮半島情勢をめぐり南北首脳会談、米朝首脳会談が続いたことで、松井市長は緊張緩和が対話により進むことに期待を寄せた。
式典には被爆者や遺族ら約5万人(市発表)が参列。核保有国では米、英、仏、ロシアを含む85カ国の駐日大使らが参列したが、中国や北朝鮮は欠席した。
式典では、原爆死没者慰霊碑にこの1年で死亡が確認された広島での被爆者5393人の名前が新たに奉納され、死没者は計31万4118人となる。松井市長は平和宣言で「年々被爆者の数が減少する中、その声に耳を傾けることが一層重要」と訴えた。(宮崎園子)