(21日、高校野球・甲子園決勝 大阪桐蔭13―2金足農)
大阪桐蔭、宮崎仁斗左翼手
右打席に入り、両目をキョロキョロさせる。三塁手の位置、外野のポジション、投手の表情。「視野を広げて色んなものを見るんです」。四回1死一、二塁。6球目に見つけたのが、吉田の失投だった。
内角の140キロ直球をコンパクトにさばく。白球は左翼席へ。「ホームランを打つタイプじゃない。二塁を回るまで気づかなかった。三振しないように必死でした」。リードを5点に広げる一発となった。
身長はメンバーの中で最も低い170センチ。「体格がないのは不利」だと思ってきた。簡単に柵越えを放つ仲間がゴロゴロいる。その中で生きる道を探した。見つけたのは、球を見極める力だった。
春の選抜決勝ではヒットエンドランで決勝打を放った。さらに選球眼を極めようと、打席では努めて無表情を貫くように。「感情をあらわにすると周りが見えなくなるので」。夏の北大阪大会準決勝の履正社戦では1点を追う九回2死から四球を選んで逆転につなげた。三振は甲子園の28打席でわずかに一つ。
春夏連覇の歓喜の輪で、やっと笑顔になった。「体が小さくても、やれるんです」。この1番打者がいなければ、偉業は成し遂げられなかった。(小俣勇貴)