準々決勝でサヨナラ負けを喫した近江(滋賀)の多賀監督のコメントに接して、胸が痛くなった。「相手を応援する球場の雰囲気にものみ込まれた」。劣勢のチームを観衆が後押しする「判官びいき」は、甲子園の常だ。しかし近年、少々度が過ぎてはいないか。
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少しでも長く試合を楽しみたい、選手に長く試合をしてほしい、との思いからの声援とは推察できる。リズミカルな応援マーチが増え、乗りやすい事情もある。ただ、一方にくみすると、巨大なプレッシャーがもう一方にのしかかることを、忘れてほしくない。
91回大会決勝で猛追を見せた日本文理(新潟)のエース・伊藤直輝は応援が力になったと当時を述懐しつつ、続けた。「逆の立場なら、嫌ですね」。負けていても勝っていても、選手は一瞬に全力を尽くしている。相手を思いやるスポーツマンシップを、球場全体で共有したい。(山下弘展)