[PR] 「セックスはマストではない。でも、している。その変さに興味があります」――。作家の村田沙耶香さんは、自然と口にする。「いのち短し 恋せよ乙女」。大正期に生まれた歌は、まるで命令するかのように少女に恋愛を勧めていた。平成の今、体外受精、精子提供などの科学技術により生殖の選択肢は広がった。男女ともに生涯未婚率は上がり、少子化は進む。夫婦の性交渉は忌むべきものとされる社会を描いた『消滅世界』、主人公が性的な接触を一切持たないという条件で夫を選ぶ『地球星人』。小説で多様で斬新な性愛の形を描いてきた村田さんに聞いた。私たちはこの先も恋をするのだろうか。 地球を改変「人類の時代」 気候操作は「管理者責任」? GAFA時代の「人間の条件」 21世紀の人権宣言とは
作家の村田沙耶香さん=山本壮一郎撮影 ――芥川賞を受けた「コンビニ人間」は恋愛経験のない36歳の女性が主人公でした。 「作品を書き終えて、性経験のない人の苦しさを聞く機会がありました。20代前半の女性で、自分はきっとブスでモテないから一生誰にもセックスしてもらえないんだと言う。『してもらう』という感覚がとても苦しいし、しんどいと思いました。しない自由もあるし、しなくても問題ない。子どもが欲しいだけなら精子バンクを使って産むことも可能ですよね。セックスは人生の必修科目のように言われていますが、そうでしょうか。そういう想像が広がって、次の作品『地球星人』につながっています」 ――これから出る『地球星人』では主人公が性的な接触を持たない条件で合致した男性を夫に選びます。両親は激怒しますが、二人は仲良く、共同生活は穏やか。恋愛をしない人物を描くのはなぜですか。 「思春期や大学生の頃は恋愛にすごく興味がありました。恋愛は純粋なものだと思っていて。いつか自分は子どもを産まなくてはいけないのだろうと義務のようにも感じていました。幻想の恋に憧れ、一方で苦しさもありました。今になってみると、違う生き方をまったく想像していなかったのが不思議です」 「私が書く、恋愛をまったくしない人たちは、私の理想なのかもしれません。夫婦の関係が性的にクリーンで、しかし孤独ではない。イギリスの雑誌『GRANTA』に向けて書いた短編「清潔な結婚」(2014年)は兄弟のように穏やかな生活をする、自分では変わった夫婦の話だと思っていたのですが、海外の編集者の女性に彼らの気持ちがわかると言われました。読者からも共感した、ああいう感じの結婚をしたい、と声をかけられた。不妊ではないけれど性的なことをしたくないから人工授精をするというカップルの話を聞きます。仲の良いきょうだいみたいに暮らしているのに、子どもがほしいからと排卵日に突然ムードを出すのは恥ずかしい、という友だちもいます。私たちは本当はもう違う場所にいるのに、制度が追いついていないんじゃないか。それで、制度も技術も全部追いついちゃった世界はどうなんだろうと思って書いたのが『消滅世界』でした」 マストでないのにセックス、その変さ ――『消滅世界』(2015年)は夫婦の性交渉は忌むべきもの、人工授精で産むのが「正しい」とされる世界です。主人公の夫は人工子宮をつけ、「妊夫」となります。 「現実の仕組みを知りたいという気持ちが強かった。そうではない仕組み、たとえば科学技術が発達して男の人が子どもを産めるようになったら、まったく違う世になる。夫が産休をとる間に妻がばりばり働くとか。男同士や女同士で結婚して、育児と仕事を分担するとか。『消滅世界』を書きながら、セックスが消えても繁殖できる私たちについて考えていました。未来ではセックスをする方が少数派になっているかもしれない。『え? 君はセックスしたことがあるんだ、珍しいね!』と。『えー? どんな感じだった?』とみんなから聞かれて『一度経験してみようと思って、最新の施設に行ってトライしたんだ』『へーっ』なんて会話をしたり。今でも性交渉なしで子どもは作れるし、セックスはマストではない。でも、している。その変さに興味があります」 ――『地球星人』や『消滅世界』の主人公は、性欲にはとらわれていますね。 「人間から性欲がまったくなく… |
セックスする人、少数派かも 芥川賞作家が想像する未来
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