日本文学研究者のドナルド・キーンさんが24日朝、96歳で死去した。別れを惜しむ声が各界から寄せられた。
【特集】ドナルド・キーンさん死去
ドナルド・キーンさんとの共著があるジャーナリスト、徳岡孝夫さんの話
突然の悲報は本当にショックです。キーンさんが日本永住を決め、日本国籍を取得する時に「アメリカは、国籍を捨てるほどの悪い国ではない」と反対したのですが、キーンさんは「日本を本当に愛しているんだ」と。覚悟は揺るがなかったようで、日本に、日本人にほれた人だったと思います。
キーンさんは戦時中、語学将校としてハワイや沖縄で従軍しましたが、日本兵の家族に宛てた手紙を読み、胸を打たれ、日本への思いを強くしたと聞きました。戦争の経験が、日本への愛の礎になったのでしょう。
日本文学研究者としての功績は大きい。世界にまだ注目されていなかった頃から、日本文学の全体をみることができた人でした。評論する場合も、日本人の日常行動を見る場合でも、良いものは良い、悪いものは悪いとはっきり言う人でした。
交流のあった能楽師狂言方、野村万作さんの話
ご自身が狂言「千鳥」を演じた時ですが、驚くほど大きく立派な声だったのを覚えています。文学だけでなくオペラなど音楽にも詳しく、狂言芸と囃子(はやし)の関係を見事にとらえ、鋭く評価でき、しかもはっきりものを言う方でした。
最初にお目にかかったのは、もう60年以上前のことです。ニューヨークのコロンビア大学での講義を聴きに行ったこともありますし、ご自宅に泊めていただいたこともありました。気さくで庶民的な人柄で、東京への移住後、近隣の人たちから「キーンさん」と親しみを込めて呼ばれていました。日本文化の総体と交流できる最後の大きな先生を失ったという、非常に寂しい気持ちでいっぱいです。
■作家の池澤夏樹さ…