北朝鮮が日本海側の江原道元山(カンウォンドウォンサン)でサッカー専用競技場の建設を始めた。8月に訪朝した韓国南北体育交流協会の金慶星(キムギョンソン)理事長が明らかにした。元山は金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が生まれた場所とされ、空港や観光施設の建設が相次いでいる。
金理事長によれば、北朝鮮でサッカー専用競技場が建設されるのは初めて。観客席は1万5千~2万席程度で、来年3月の完成を目す。来年5月の国際親善大会などでお披露目される。元山のほかに、平壌でも建設を模索している。
正恩氏は2012年11月に国家体育指導委員会を創設するなど、国内統治の手段として体育行政に力を入れてきた。金理事長によれば、15年からスポーツ専用チャンネルのテレビ放送も始まった。サッカー専用競技場の建設も、正恩氏自身の指示という。
ただ、元山を本拠地にするチームは北朝鮮サッカー3部リーグの所属。サッカー専用競技場の建設は、1部リーグの強豪「4・25体育団」を抱える軍関係者が担当するとされ、元山の開発を重視する北朝鮮当局の姿勢が浮き彫りになった。
複数の北朝鮮関係筋によれば、正恩氏は1984年、元山にある特閣と呼ばれる金正日(キムジョンイル)総書記の専用別荘で生まれた。正恩氏が09年4月、初めて金総書記の現地指導に同行した場所も元山農業大だった。権力継承後は、元山にある葛麻飛行場や葛麻海岸観光地区の整備を進めている。(ソウル=牧野愛博)