(21日、プロ野球 広島7―3阪神)
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広島は1点を追う七回2死一、三塁から、鈴木の適時打で同点。さらに敵失で勝ち越し、優勝へのマジックを一つ減らして3とした。
鈴木が同点打
打席に向かう24歳の若者からは勝負師の匂いがぷんぷんとした。1点を追う七回2死一、三塁で広島は鈴木。2死無走者から菊池、丸の先輩2人がしぶとく四球を選んで築いた好機だ。左前に同点適時打をはじき返す。一塁をオーバーランし、鬼の形相のまま、ほえた。
打たないわけにはいかなかった。阪神が送り出してきた桑原にはやられっぱなしだ。昨季からここまでで8打数無安打、5三振。なかでも前夜は屈辱だ。2点を追う七回2死一、二塁。懐を147キロで突かれ、バットを出すことすらできず三振に倒れた。試合後、直前の打席で放った自己最多30号本塁打について聞かれても、「どうでもいい。そのあとのチャンスで打てていない」。自らへの怒りがおさまらなかった。
3連覇へ突き進む9月に入って調子を落とす。8月は月間打率が4割超、29打点もあったのに、9月は前日までで2割4分5厘、10打点。チームの苦境で打ってこその4番、という自負を持つが、「現にそうやってこじ開けているのは丸さん。自分は出来ていない」とこぼしたことがある。
七回に仕留めたのは桑原の得意球の一つスライダー。その同点適時打の直後、敵失で勝ち越した。この夜、苦境のなかで扉をこじ開けたのは、間違いなくこの若き4番だ。試合後、適時三塁打を放ってお立ち台に呼ばれた新井のインタビューが響くなか、ベンチ裏でバットを振り込んでから、取材に応じた。「全然得点圏で打てていなかった。気持ちは入っていた」。22日にもリーグ優勝に王手をかけられる。(竹田竜世)