来春に就職予定の大学生の内定式が1日、多くの企業で開かれた。経団連の指針に合わせた動きだが、就職活動の早期化に伴って指針は形骸化が指摘されており、経団連は9日にも廃止を決める見込みだ。
台風一過の1日午後、都内であった金融大手りそなグループの内定式には約400人が参加した。上智大4年の女性(22)は「今までは親から支えてもらう立場だった。社会人になって恩返ししたい」と話す。3年の秋から就活を始め、インターンシップ(就業体験)などを経て3社から内定をもらい、「(学生優位の)売り手市場だと感じた」という。就職情報大手リクルートキャリアによると、9月1日の大学生の内定率は91・6%。前年比3・2ポイント増で、この3年で最高だった。
経団連が加盟企業に求める「採用選考に関する指針」は、大学3年の3月に会社説明会などの広報活動、4年の6月に面接などの選考を解禁するとしたうえで、正式な内定日を10月1日以降にするよう求めている。ただ、6月より前から選考をする企業が相次ぎ、指針は形骸化している。
前倒しを加速させた一因がインターンの広がりだ。就職情報大手マイナビによると、学生の参加率は78・7%。過半数が3年の8月に最初のインターンを経験したという。経団連の中西宏明会長は先月、一括採用に疑問を示したうえで、形骸化などを理由に指針の廃止に言及しており、今月9日の正副会長会議で正式決定の予定だ。
指針を廃止すれば就活がさらに前倒しされる可能性があり、大学からの反発は強い。混乱を収めようと、政府は今月中旬にも経団連や大学側と話し合いの場を設けたいとしている。(土居新平、森田岳穂、加藤裕則)