高校野球の秋季岡山県大会は6日、準決勝2試合があり、すでに中国大会出場が決まっている4校がぶつかった。最速150キロ右腕の西純矢(2年)を擁する創志学園は、倉敷商に5―7で敗れた。
二回、2死満塁のピンチで伝令が走る。マウンドに出来た輪の中心で、西は笑っていた。
今夏の甲子園1回戦。創成館(長崎)から16個の三振を奪い、注目を集めた。一方で、三振を奪うたびに見せた派手なガッツポーズを審判から注意された。打たれれば、仏頂面に。感情のままに投げていた。
この秋は違った。「自分がイライラして態度に出したら、みんな暗くなる。みんなあっぷあっぷだったので、笑顔でいました」。二回に4点を先行されても、仲間への笑顔を絶やさなかった。
9回を投げ、許した安打は13。毎回、走者を背負い、奪った三振は五つだけ。7点を失う苦しい投球に、夏までなら悔しさが先に出たはず。西は穏やかな表情で振り返った。「打たれて勉強になることもあるので」
実はこの試合、甲子園での快投を支えたスライダーを、ほとんど使っていない。もちろん、中国大会での再戦を見据えてのことだが、西には別の思惑があった。「秋は1試合1試合、成長していかないと」と、投球の幅を広げるチャレンジを試みたのだ。
打ち込まれて気づいた。「(速球対策をされる)岡山では、直球で力任せにいったら、悪い結果になる。他の変化球のコントロールを磨きたい」。課題とも、しっかり向き合っている。
そんな西も、最後の1球だけはムキになって腕を振った。3点を追う九回2死三塁。投ゴロに仕留めた直球は、この日最速の149キロを計測した。「あそこは気合が入っちゃいました」と苦笑いを浮かべた。
敗れはしたが、まだ秋は続く。「夏は自分のガッツポーズとか(未熟な部分が)色々出てしまった。春の甲子園では、成長した姿を見てもらいたい」。情熱的なエースの変化が楽しみだ。(小俣勇貴)