福井県で開かれている第73回国民体育大会の高校野球硬式で2日、今夏の甲子園で準優勝した金足農(秋田)が2回戦で常葉大菊川(静岡)を7―0(七回コールド)で下し、快進撃を支えた吉田輝星(3年)は高校最後の大会を白星で終えた。
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先発のマウンドには、吉田があがった。立ち上がり、2死満塁のピンチを背負ったが、焦らない。冷静に厳しいコースを攻めて空振り三振を奪い、波に乗った。
二回には自己最速を更新する152キロを計測した。それに気づくと、ガッツポーズ。「調子は悪くなかったので、150キロは出ると思っていた。すごく気持ちよかったです」
その後も伸びのある直球はさえ、変化球も低めに決まる。5回を投げて、被安打は4。無失点にまとめ、11個の三振を積み上げた。
六回以降は右翼の守備へ。ここでも非凡さを見せた。七回、右翼後方への大飛球に対し、落下点へ一直線に走る。ぎりぎりで好捕し、勢い余って芝生の上を一回転。ボールは離さず、すかさず捕球のアピールをしてみせた。打っては2安打。七回無死一、三塁、三塁走者の場面では、金足農の“伝家の宝刀”スクイズで生還し、コールド勝ちを決めた。
整列。U18アジア選手権でともに戦った常葉大菊川の奈良間大己(3年)と握手をかわすと、「終わり方、かっこよすぎだろ」と言われた。「だって、俺たち金足だから、しょうがないじゃん」と返した。ほほえましいやりとりが終わると、福井の夜空に全力で校歌を響かせた。
試合後、進路について質問が相次いだ。「最後の試合を楽しむことだけ考えていたので、全然考えてませんでした」とさらり。相手の狙いをかわす術は、十分に心得ている。
台風24号の影響で大会日程が変わり2回戦で打ちきりとなった。今夏の決勝で敗れた大阪桐蔭との再戦の可能性がなくなったことには、「もう一回リベンジしたい気持ちはあった」と残念がったが、4強のチームに与えられる「1位」に対しては、「4チームですが、1位になって良かったです」と素直に喜んだ。
最後の大会を終え、吉田は高校3年間を振り返った。「トータルすればつらいことの方が圧倒的に多かったけど、甲子園に来て初めて野球の楽しさを知った。それまでは勝たなきゃいけないとか、きつい練習に耐えなきゃいけないって考えていたけど、国体とか甲子園は、野球を本当に心から楽しむことができた」。100回大会世代の屈指の右腕は、最高の形で高校野球を終えた。(小俣勇貴)