建設中の北陸新幹線と九州新幹線で、事業費が当初計画を大きく上回る見通しとなったことから、政府はJR各社に追加の費用負担を求める調整に入った。来年度の予算案を決める年末までに決着させたい考えだが、JR各社の反発は必至だ。国や地方の予算が膨らんで国民の負担増につながる可能性があり、予算編成の焦点の一つになる。
建設中の整備新幹線は、北陸(金沢―敦賀)、九州(武雄温泉―長崎)、北海道(新函館北斗―札幌)の3区間。国土交通省の最新の試算では、このうち北陸の事業費は建設を認可した時の1兆1600億円から1兆4100億円に、九州は5千億円から6200億円にそれぞれ拡大。人件費の上昇や工法の変更、東日本大震災を受けた耐震基準の改定などが原因という。
九州は今年度中、北陸は2020年度中に、それぞれ実際にかかった費用が認可時の事業費を上回る見通しだ。事業を続けるには新たな財源を確保し、国交相から再び認可を取らなければならなくなった。
整備新幹線の事業費は、JR各社と国、沿線自治体が負担する。具体的には、線路などの施設を建設・保有する独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」に対し、施設を借りているJR各社が開業から30年間払う貸付料と、残りの3分の2を国が、3分の1を沿線の自治体が負担することで賄う仕組みだ。
だが、それだけでは毎年の事業費が足りなくなり、いまは将来入る見込みの貸付料を担保に借金をして事業費に回している。今年度の事業費計3480億円のうち、そうして借りた分は1654億円にのぼるが、今後数年でその担保も尽きる計算で、借金もできなくなるという。
そこで政府は、新幹線事業によって収益が想定を上回っている会社があることなどを理由に貸付料を増額したい考えだ。政府関係者によると、国交省は今月、JR側と調整を始めており、貸付料の算定方法を変更する案や、支払期間の30年を延長する案などを検討している。しかし、JR各社は過去にも貸付料の増額に激しく反発してきた。いまの貸付料制度が始まった97年以降、JR各社の負担は増えておらず、調整は難航が予想される。
■財源確保策も限…