米カリスマ経営者、イーロン・マスク氏が率いる米テスラ社が、中国・上海に建設する工場の広大な用地を確保した。電気自動車(EV)大手であるテスラが、米国以外で初めてつくる海外の生産工場だ。
米国のEV最先端企業はなぜ中国に生産拠点を置くのか。
いまテスラは、中国に工場をつくる手続きを加速させてもいる。実はそこから見えてくるのは、過熱する米中貿易摩擦がもたらした側面だ。
トランプ大統領が、中国の知的財産侵害に怒り、中国製品に巨額の追加関税をかけている最中に、なぜ米国の知財の塊のような先端企業が中国への展開を急ぐのか。米国が仕掛けた貿易摩擦の先に見えるのは、皮肉にも中国の思惑通りの帰結だ。
テスラと上海市が協定締結 EV工場建設、米国外は初
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テスラが今回取得したのは、上海市で210エーカー(約85ヘクタール)に及ぶ広大な工場用地だ。「上海でこの場所を確保できたのは、画期的だ」。テスラ幹部は同日の式典で喜んだ。
7月に上海市と建設協定を結んだあと、テスラは準備作業を加速させてきた。
背景にあるのは、米中貿易摩擦だ。米国が7月初め、中国からの340億ドル分の輸入品に25%の関税をかけた際、中国が報復措置として課したのが米国産EVへの追加関税だった。
テスラによると通常の15%の関税に、報復分の25%が上乗せされ、いまの関税は40%に達する。中国当局は国産のEVに15%以上の補助を出しているといい、テスラは「(合計で)コスト上、55~60%も不利」と悲鳴をあげていた。10月初め、テスラは「こうした問題に対処するため、上海工場の建設を加速させる」と明言し、17日には用地の確保にこぎつけたのだ。
とはいえ、工場が稼働するのは…