独メルセデス・ベンツ日本法人は、新型「Aクラス」を約6年ぶりに全面改良し、18日に受注を始めた。独自に開発したAI(人工知能)による音声認識機能「MBUX」(メルセデス・ベンツ・ユーザー・エクスペリエンス)を初搭載し、運転中に声で車内の温度調節をしたり、目的地を設定したりできる。ガソリン車のみで、価格は消費税込み322万円から。
「ハイ、メルセデス」と話しかけるか、ハンドルにあるボタンを押せば、音声認識が起動する。スマートスピーカーと同様の仕組みで、ハンドルから手を離さずに音楽やラジオを聞いたり、近くのレストランやガソリンスタンドを検索したりと様々な機能が使える。
「傘は必要?」と話しかければ、ネット上の天気情報を音声で伝える。ドライバーが発した言葉や設定した目的地、音楽などをAIがデータとして蓄積して学習し、よく通るルートを走るときに設定することが多い目的地や、流している音楽を車載ディスプレーに表示するようになるという。
Aクラスはメルセデスの中では低価格帯の小型車。音声認識機能へのニーズが高い20~30代に人気があるため、Aクラスから搭載した。今後売り出す他の車種にも順次搭載する方針だ。
独メルセデス・ベンツ日本法人が18日に都内で開いた発表会には、多くの報道陣が詰めかけた。
「ハイ、メルセデス」。デモンストレーションで助手席に座った男性が呼びかけると、「どうぞお話しください」。男性が「ちょっと暑いんだけど」と話しかけると、「21度にします」と応じ、車内の室温を自動で調整していた。
AIによる音声認識機能を搭載した車の需要は世界的に高まっている。トヨタ自動車や日産自動車、ホンダなど日系自動車メーカーも対応を急いでおり、スマートフォンと車載端末を連動させる米アップルの「カープレイ」や、米グーグルの「アンドロイドオート」などが使える車を投入している。メルセデスのように音声認識機能を独自で開発するのはめずらしいという。トヨタ自動車は15日、無料通信アプリ大手LINE(ライン)の音声認識AI「クローバ」が使える車載端末を来春に売り出すと発表した。(高橋克典)