(21日、パ・リーグCS最終ステージ第5戦 ソフトバンク6―5西武)
打ったというよりも、かちあげた。1点リードの六回無死。ソフトバンクの柳田が、変化球に反応した。アッパースイング。高々と舞いあがった打球は、長い長い滞空時間を経て、右中間席最前列まで届いた。交錯する歓声とため息。球場の雰囲気を一変させた。
異様なムードになったのが、その前の五回裏。西武の仕掛けた二盗が、微妙なタイミングでリクエストとなったが、判定通りアウト。大ブーイングが起きた。騒然とした中で、柳田は打席に入った。「点を取るのが仕事」と、一発で敵地ファンを黙らせた。
決して絶好調ではなかった。第1Sは3試合で、たった1安打。それでも、切り替えられるのが強み。藤本打撃コーチも「最終Sは打ってくれる」と、爆発を疑わなかった。終わってみれば初戦から5戦連続安打で、この日も計4打点。「自分でいいのかなという気持ち」と、初のCS最優秀選手も、かっさらった。
リーグ戦では一度も首位を奪えなかった強打の西武に、短期決戦では打ち勝った。5試合で計63安打、44得点。CS同一ステージの最多安打、得点記録を大幅に更新した。そして、球団初のリーグ2位からの日本シリーズ出場も決めた。
次の舞台は広島。郷里で初めて迎える大一番に柳田は、「生まれ育った町で戦えるのはうれしい。ここまできたら、あと四つ勝ちます」。勢いに乗り、2年連続の頂点をとりにいく。(甲斐弘史)