日本取引所グループ(JPX)傘下の東京証券取引所は23日、9日に起きたシステム障害の原因と再発防止策をまとめた報告書を金融庁に提出した。メリルリンチ日本証券からの大量のデータ送信で回線の一部が使えなくなり、切り替えに手間取った約40社が一時売買注文を受けられなくなった。東証は再発防止策としてシステム設定の変更や障害時に備えたテストを実施。市場運営者として責任を取り宮原幸一郎社長の月額報酬の10%を1カ月減額する。
東証によると、9日の現物取引開始前の午前7時31分、メリルから東証に通信確認のデータを送る際、ネットの住所にあたる「IPアドレス」についてメリルが自社側の二つのサーバーを誤って同じに設定。いったん東証と接続した同じアドレスから再びデータを送る形になった。東証は正しい送信なのか確認できないまま、メリルから繰り返し大量のデータが送られてきた。そのため東証と各社を結ぶ4回線のうち1回線がパンクして機能停止した。
東証は午前8時3分と同7分に各社へ別回線への切り替えを指示し、通常通り午前9時から現物取引を行った。だが東証と接続する90社のうち約40社が切り替えに手間取り売買注文を一時受けられなかった。東証は「対応に差が出た原因は各社の事務、システム方式の違いもある」とし、確認作業を進めるとしている。
影響を受けた証券会社は、本来なら売買が成立したとみられる10万件ほどの注文について、必要に応じて顧客に補償する。負担を東証とどう分け合うかが焦点だが、23日説明した東証幹部は「再発防止を関係者と話し合いながら真摯(しんし)に取り組む」とするにとどめた。(大和田武士、柴田秀並)