三井住友トラスト・ホールディングス(HD)のグループ再編で、アジア最大級の資産運用会社となった三井住友トラスト・アセットマネジメント(AM)の菱田賀夫社長が朝日新聞の取材に応じた。機関投資家向けの長期運用のノウハウを個人向けにも生かすことで、個人の資産形成に役立てる意欲を示した。
個人向けが主力の三井住友トラストAMは、10月1日に年金など機関投資家向けに強かった三井住友信託銀行の運用部門を統合した。菱田氏は「機関投資家向けに強化してきた調査能力や技術を、個人客にも生かす」と述べた。
注目するのは比較的リスクの小さい「パッシブ運用」の手法を使う金融商品だ。パッシブ運用は、市場の動向と同程度の成績を目指す。少ない利幅でも多額の運用でもうけられる機関投資家向けとの見方もあるが、菱田氏はこうした商品は個人客でも長期保有することで利益を積み上げやすいことから、「(個人が)中長期投資を考えた時にまず浮かぶ運用会社になりたい」と語った。
日本の家計の金融資産は約1800兆円あるが、過半が現預金で、株式や投資信託などリスク性資産は欧米に比べて少ない。今年3月末時点で、3メガバンクの窓口販売で投資信託を買った個人客の4割が損失を抱えているデータも明らかになった。購入した金融商品を短い期間で手放しがちで利益を出しにくいといった問題が指摘されている。
個人の「貯蓄から投資」が進まないことについて菱田氏は「金融リテラシー(知見)の推進室をつくり、どんどん情報提供していく」とする。機関投資家に豊富な資料で子細に商品を説明するスタイルを、個人向けにも広げていく考えだ。具体的にはセミナーの開催や、商品を実際に販売する銀行や証券会社の窓口販売員への説明を手厚くすることで、その先にいる個人客の理解も深めていく。(福山亜希)