大手予備校の河合塾が福岡校(福岡市)などで講師として29年間働いた男性を雇い止めにしたのは、無効の可能性があると、福岡労働局が指摘したことがわかった。男性は、有期の雇用契約を繰り返して5年を超すと無期契約への転換を求めることができる「5年ルール」の適用を逃れるための雇い止めだとして、労働局に申し出ていた。
「5年ルール」は有期雇用で働く人たちの雇い止めの不安を解消する狙いで2013年に改正された労働契約法に盛り込まれ、今年4月から本格的に適用が始まった。無期転換を避けるため、大学の非常勤講師などが雇用契約を打ち切られたとして訴訟に発展しているケースもある。
雇い止めになったのは佐賀県鳥栖市の松永義郎さん(68)。1989年から河合塾で講師として働き、少なくとも2010年からは雇用契約が毎年更新されていたが、今年3月末に「授業アンケート結果が改善されなかった」などとして雇い止めされた。
労働局は9月、雇い止めが「社会通念上相当と認められるか疑問がある」などとして双方で話し合うよう河合塾に文書で助言した。同法は合理的な理由がない雇い止めは無効と定めている。文書に強制力はないが、「無期転換ルールを避けるための雇い止めは法の趣旨に照らして望ましいものではない」とも指摘し、河合塾に「慎重な対応」を求めた。九州労働弁護団事務局長の光永享央(たかひろ)弁護士は「有期雇用の労働者を保護する立場に立った踏み込んだ判断だ」と評価した。
河合塾は「無期転換を意図的に避けるために雇い止めにしたことはない。先方の主張は当方の認識とは異なるもので、話し合いで歩み寄れるものはない」としている。(山野健太郎)