インド洋の島国スリランカで26日、シリセナ大統領が親欧米のウィクラマシンハ首相を突然解任し、反欧米で中国寄りとして知られたラジャパクサ前大統領を新首相に任命した。宣誓も行われたが、解任されたウィクラマシンハ氏は「議会の多数は私を支持しており、今も首相だ」と主張。混乱が深まっている。
ラジャパクサ氏は2015年までの2期10年間の大統領在任中、中国からの借り入れでインフラ整備を進めた。一方、反政府勢力との内戦で市民4万人の犠牲を出した責任を欧米から追及されている。
シリセナ氏は元々、ラジャパクサ政権の保健相だったが、ウィクラマシンハ氏が率いる政党に担がれて離反し、15年の大統領選で勝利。対中債務の返済に窮して経済状態が悪化する一方、隣国インドとの関係をめぐり、インド寄りのウィクラマシンハ氏との不仲が伝えられていた。
日本政府は、インド洋地域への進出を強める中国を牽制(けんせい)する狙いから、インドと協調したスリランカ支援の計画を進めている。28日から来日するインドのモディ首相との首脳会談でも、スリランカ型の日印協調が話し合われる見通しだが、スリランカの政治混乱が影響を及ぼす可能性がある。(ニューデリー=武石英史郎)