明治神宮野球大会は12日、高校の部準決勝があり、札幌大谷(北海道)が5―2で筑陽学園(九州・福岡)に勝って、初出場対決を制した。先発した右横手投げの太田流星(2年)が八回まで無安打無失点の好投を見せた。
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世の中そんなに甘くない
九回、先頭打者に投じたカーブが甘く入った。打球が右翼手の手前で弾むのを見て、太田は苦笑いを浮かべた。内野手がマウンドに集まる。「みんなから『世の中そんなに甘くない』と言われました」と笑った。その後も連打を浴びて2失点したが、後続を抑えて完投した。
船尾隆広監督が「試合をつくる信頼度は高い」と言うように、これまでは救援に回ることが多かった。しかし、東京に来てから絶好調。この日の朝に先発を言い渡された。自己最速は127キロながら、右横手からシュート、スライダーをコーナーに決めた。
横手投げにしたのは札幌大谷中2年の冬。「中学入学時は同学年は30人ぐらいいて、そのうち20人が投手。だから外野手になった。でも最後は自分の好きなことがしたいと投手になった」。特徴を出すために横手投げにした。フォームは自己流で、テンポの良さは牧田和久(西武―パドレス)をまねたという。
この日も捕手からボールをもらうとすぐに構えて、テンポ良く投げ込んだ。「2回まで投げたところで自分からみんなに『(無安打無得点試合が)あるよ、あるよ』と冗談で言っていたんですが、本当に意識したのは七、八回から」。筑陽学園の江口祐司監督は「かなりコースに来ていた。打者の手元に来てから変化するので狙い球を絞れなかった」と悔しがった。
根気強い性格
太田は根気強い性格のようだ。試合後、報道陣に器用なところはあるのかと尋ねられると、「絡んだコンセントをほどくのが好き」と答え、笑いを誘った。そんな右腕が奪った三振は二つだけ。身上の丁寧な投球で凡打を誘い、2失点完投。初出場のチームを決勝に導いた。(坂名信行)