人権問題を扱う国連総会第3委員会は15日、北朝鮮の人権侵害を非難する日本と欧州連合(EU)主導の決議案を採択した。14年連続の決議で、今回は「拉致被害者とその家族の長年の苦悩」との文言が新たに加わり、被害者の早期帰国の「緊急性」を指摘した。
無投票でのコンセンサス(議場の総意)で採択されたが、中国やロシア、シリア、イランなどが総意からの離脱を表明した。
朝鮮戦争などで生き別れた韓国と北朝鮮の離散家族が今年8月に再会したことや、同9月の南北首脳会談で離散家族問題の根本解決への決意が示されたことについて「歓迎する」とも新たに盛り込んだ。
日本の別所浩郎国連大使は会合で拉致問題の解決は「一刻の猶予もない」と訴え、各国に支持を求めた。一方、北朝鮮の金星(キムソン)・国連大使は「断固拒絶する」と述べ、演説直後に退席。中国は「人権問題の政治化に反対」と、ロシアは「決議に効果はなく、加盟国間の関係を悪化させる」と離脱の理由を説明した。
また、決議には例年通り北朝鮮の人権侵害を国際刑事裁判所(ICC)に付託するよう安全保障理事会に促す文言がある。米国は決議案の共同提案国に名を連ねたが、「自国民をICC管轄下に置かないという米国の判断が尊重されることを期待する」と述べ、この部分については「支持できない」と表明した。
決議は12月の国連総会本会議で正式に採択される。総会決議に法的な拘束力はないが、国際社会の意思を示す効果がある。(ニューヨーク=金成隆一)