カンボジアのフン・セン首相が独裁色を強めるなか、来日中の同国の著名な人権活動家トゥン・サライさん(66)が17日、朝日新聞の取材に応じ、「我が国が道を誤らないよう、積極的に関わってほしい」と述べ、日本にカンボジアの人権状況の改善に向けた関与を求めた。
同国では昨年に最大野党の救国党が解党させられ、7月の総選挙では与党・人民党が下院の全議席を独占した。人権活動家の逮捕も相次いでいる。
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サライさんは「弱小だった複数の野党が数年前に団結し、有権者の不満をすくい上げて選挙で勝ち始めた。フン・セン氏は腹を立てた。それで、彼にとって天国といえる一党支配の状態をつくった」と話した。
サライさんは、同国初のNGO「カンボジア人権開発協会」の創立者。2年前、逮捕を恐れて家族の暮らすカナダへ脱出した。「国外に逃れたが、黙っていては現政権を容認したも同然。祖国の仲間と連絡を取りつつ、国際社会に協力を求めるのが私の今の仕事だ」と述べた。
内戦を終わらせた1991年の和平協定と復興に、日本も関わってきた。サライさんは「日本は多額の税金や人材を投じて私の国に貢献してきた。その努力を無駄にしないよう、フン・セン氏に強く働きかけてほしい」と要望した。
サライさんはこの日、92~93年に国連カンボジア暫定統治機構の国連事務総長特別代表を務めた明石康さんにも面会した。明石さんはフン・セン氏について「能力があり、勤勉な政治家だ。(特別代表だったころに)熱く、誠実に一緒に議論したことを(フン・セン氏に)思い出してほしい」と述べたほか、「平和的で啓蒙(けいもう)的な活動を忍耐強く続け、支持者を増やしていってほしい」とサライさんを励ました。(古谷祐伸)