英国の欧州連合(EU)からの離脱条件などを定める協定案に政権・与党からも異論が相次ぐなか、メイ首相は「この道が最善」と、あくまで25日のEU首脳会議での合意を目指す構えだ。政権の命運を左右する「決定的に重要な7日間」(メイ氏)が始まった。
メイ首相、EU離脱移行期間の延長示唆 2022年まで
あれから2年以上…英国のEU離脱、何をもめてるの?
「政治家だけでなく企業の声に耳を傾けるべきだ。彼らはいい協定を望んでいる」。メイ氏は19日、英産業連盟の年次総会でこう話し、協定案を支持する産業界を引き合いに与党・保守党に広がる「メイ降ろし」の動きを牽制(けんせい)した。
メイ氏は25日までにEUのユンケル欧州委員長と会談し、EUとの通商関係などの大枠を定める「政治宣言」の詰めの協議をする意向。英国に都合のいい内容を政治宣言に盛り込み、協定案への批判をかわす狙いだ。
保守党内の「強硬離脱派」議員らは、党首のメイ氏に不信任を突きつけようと信任投票の実施に必要な書簡を出すよう党所属議員に呼びかけている。投票の実施には所属議員315人の15%にあたる48人の書簡が必要だが、書簡を送ったことを明らかにしたのは25人にとどまる。信任投票を所管する委員会のブレイディー委員長も18日、ラジオ番組で48人には達していないことを示唆した。
信任投票が行われても、過半数の不信任票を集めるのは難しいとみられている。ただ不信任票が多ければ、今後の議会の手続きで協定案が否決される可能性が高くなるため、メイ氏に協定案の見直しを迫る圧力になる。
閣内にも修正を求める声がある。英メディアによると、メイ氏とかつて党首の座を争ったレッドサム院内総務を中心に、ゴーブ環境相やフォックス国際貿易相らがメイ氏に協定案の再交渉を迫る意向という。協定案に反発する大臣4人がすでに辞任しており、メイ氏は対応に苦慮しそうだ。
英国とEUが暫定合意した離脱協定案は、最大の懸案だった英領北アイルランドとEU加盟国アイルランドとの間に税関などを設けなくて済むようにする具体的な解決策を先送りした。
経済環境の激変を避けるために2020年12月末まで設ける「移行期間」が過ぎても解決策で合意できなければ、移行期間を延長するか、「非常措置」として英国全体が将来にわたりEUの貿易ルールに縛られる可能性を残した。強硬離脱派は「これではEUに半分入ったままでEUの属国同然だ」などと反発している。(ロンドン=下司佳代子)
■強行離脱派もメイ氏…