(24日、フィギュアスケート・フランス杯女子フリー)
フィギュア特集 Kiss and Cry
フィニッシュのポーズのまま、本田真凜(JAL)の顔に笑みが浮かぶ。「少しずつではありますけど、良くなっているんじゃないかって。少し自信になるような演技でした」。表彰台には届かなかった。それでも、確かな成長を実感する総合6位だった。
「クリーンな演技ではなく、直さないといけないところはたくさん」と本人が振り返る通り、内容は決して完璧ではなかった。後半に組み込んだ3回転ループジャンプは回転不足の判定。続く3連続ジャンプも、二つ目の2回転トーループ、三つ目の2回転ループが同様の判定を受けた。
1カ月前のスケートアメリカでは、ショートプログラム(SP)で4位につけながら、フリーは「ここまで崩れたのは初めて」と語るほどの演技で総合8位と大失速。今春から拠点を米国に移したばかりだけに、勝負シーズンで犯した失敗は痛恨の記憶となって頭の片隅にこびりついている。
ただ、この日は違った。細かいミスこそあったが、フリー6位。情感たっぷりの滑りが健在なのはもちろん、前日のSPから含め、スピンは全て(最高の)レベル4だった。
「この前よりも一歩ずつ、確実に良くなっていっているんじゃないかと思います。成長できた部分もあるんじゃないかと」。1カ月間の地道な練習で立て直してみせた。「コーチとめざす自分の完成形というものを早く試合で出せるように、安定した演技が他のトップ選手のようにできるように頑張りたい」。口をつく言葉は、どれも前向きだ。
次の焦点は、12月の全日本選手権(大阪)になる。「今回のような演技ができればいいな、と。スケートアメリカが終わってからネガティブな気持ちになることがすごく多かったんですけど、でも、『自分の演技をもっと見たい』と思って下さる人に向けて良い演技を届けられたら」。一つずつ経験を積み上げて、17歳は前に進んでいく。(吉永岳央)