神奈川県の東名高速で「あおり運転」をして一家4人を死傷させたとして、危険運転致死傷罪などに問われた石橋和歩被告(26)の公判には、亡くなった萩山嘉久さん(当時45)の母文子さん(78)も被害者遺族として参加している。「真実を知りたい」。ただその一心で、3日の初公判を迎えた。 東名あおり運転、弁護側が無罪主張「停車後に事故発生」 午前10時に入廷した石橋被告は黒色のジャージー姿で、丸刈りの髪が少し伸びていた。冒頭、深沢茂之裁判長から認否を問われ、「左側から追い越したという点は右側です」などと、ぼそぼそした口調で語った。「それでいいですか」と重ねて尋ねられると、「はい」と短く答えた。 文子さんはその姿を、検察官席の後ろからじっと見つめた。口は固く結び、時折、メモを取っていた。 自宅の仏壇には、息子夫婦の笑顔の写真や思い出の品々とともに、2枚のレシートが供えられている。 1枚は昨年6月4日付の、千葉・幕張にあるアスレチック施設のもの。もう1枚は翌5日付で、東京・お台場の駐車場に午前10時20分ごろ入り、午後8時半すぎに出た記録が印字されている。事故が起きたのは、このおよそ1時間後。嘉久さん一家が家族旅行から静岡市清水区の自宅に帰る途中だった。 その2日前。次女の小学校最後の運動会で嘉久さんは声援を送り、必死になって写真を撮っていた。昼ご飯は、妻の友香さんお手製のお弁当。一家4人で食べる様子を、文子さんは笑顔で見守った。息子たちとの最後の日になるとは、考えもしなかった。 「本当に仲のいい一家。何が起きても引き離されることはないと思っていたのに……」 事故の知らせは、自宅で受けた。覚えているのはそれだけ。1週間ほどして、嘉久さんが当時着ていた服を警察官が届けてくれた。「おかえり」。穴が開き、血のにじんだTシャツをぎゅっと抱きしめた。 家にこもり、ぼーっと過ごす日… |
あおり事故、息子夫婦の死「真実を」 母は前を見つめた
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