米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設工事を差し止めるよう、沖縄県が国に求めた訴訟の控訴審で、福岡高裁那覇支部(大久保正道裁判長)は5日、県の控訴を棄却した。一審・那覇地裁判決と同様、「裁判所の審理の対象にならない」と判断した。
本土との溝、基地問題の行方は…沖縄はいま
控訴審判決は、県に海の財産管理権がある根拠はないとした上で、国や自治体からの提訴で審理対象になるのは「財産上の権利や利益の保護を目的とするものに限られる」という最高裁判例を提示。県の訴えは「県の利益の保護を目的とするものではなく、漁業関係者全体の公益の保護が目的」として、審理対象にならないと退けた。
訴訟は故・翁長雄志氏が知事だった昨年7月、那覇地裁に提訴した。漁業権のある海域で海底の岩礁を壊すには知事の「岩礁破砕許可」がいるのに、国が許可なく辺野古で工事を進めているのは違法と主張。これに対し、国は地元漁協が一部放棄を決議したことで漁業権は消滅しており、知事の許可は不要と反論した。だが一審判決は、漁業権や岩礁破砕許可の解釈については触れなかった。
県は控訴審で「漁業権が消滅したか否かという法解釈の問題を判断する責務が裁判所にはある」と訴えたが、高裁那覇支部は踏み込まなかった。県の代理人弁護士は「残念だ。上告をするかどうかは県側と相談して決める」と話した。(伊藤和行)