「体に影響があるとは……」。地元の水を飲み、魚を食べ、普通に生活していた人たちが、ベトナムで苦しんでいる。40年以上も前に起きた出来事の影響が、いまも残るからだ。記者がその現場を訪ねた。(ビエンホア=鈴木暁子)
横たわっていた次女のチャムさん(25)を、父親のグエン・バン・ザウさん(55)がいとおしそうに抱きかかえた。チャムさんは頭蓋(ずがい)の一部がない状態で生まれ、ずっと寝たきりだ。
母親のグエン・ティ・ロアンさん(56)が早朝に体を拭き、おむつを替え、ご飯や肉を柔らかくして2時間かけて食べさせる。外出は週1回の買い物だけ。
ザウさんらが住むビエンホアはベトナム戦争時に米軍基地があった。貯蔵されていた枯れ葉剤が地下水や川へ漏れ出したとされ、その影響とみられる障害を持つ人が地域に約千人いる。
ザウさんは戦争後の1980年…