「あなたが男なら間違いなく部長になれた」。結婚退社が当たり前だった時代、働き続けることを選んだ女性は、同僚男性との賃金格差にがくぜんとした。その差は月21万円。
退職迫られ「男の目を引くうちが花」私は良い子をやめた
男女を別々に採用し、昇進や昇給で女性を差別するのは違法だ。1995年、51歳だった石田絹子さん(74)は、勤めていた大阪市の住友化学工業(現住友化学)に賃金の差額分などを求め、同僚2人と大阪地裁に提訴した。「知識をつけて目覚め、行動した」という。
高校は進学校だったが、家計の事情で大学を諦めた。就職クラスで「成績トップの人が行くのが伝統」だった同社に合格し、1963年に入社した。事務職として、水槽やディスプレーに使われるアクリル樹脂シートの受注、出荷、代金回収を担った。
結婚する女性社員は退職日に振り袖姿で薬指の指輪を見せ、あいさつするのが慣例だった。石田さんは結婚・出産後も辞める気はなかった。団地の電柱に「子どもを預かってください」とビラをはり、保育ママを見つけ、子どもを預けて働いた。
「時代の空気に流されたくない」と提訴に踏み切った石田さんたち。その強さはどこから来たのでしょう。高裁が投げかけたある言葉は、今を生きる私たちにも重く響きます。
「もっと仕事をさせて下さい」…