慶応大が2017年2月に博士号を授与したメディア学者・ジャーナリストの渡辺真由子氏の博士論文について、学内に調査委員会を立ち上げたことがわかった。朝日新聞の取材に対し大学が明らかにした。
「無断転載」1章分 児童ポルノ考える本、絶版・回収へ
慶応義塾広報室によると、調査対象になっているのは、渡辺氏が16年度に提出した博士論文「児童ポルノ規制の新たな展開」。これをもとに出版された著書の絶版・回収が決まったとの報道を受けて調査委員会を立ち上げ、博士号を出した大学院政策・メディア研究科を中心に調査を始めたという。
「重大な無断転載」があったとして先月、絶版・回収が発表されたのは「『創作子どもポルノ』と子どもの人権」。マンガ、アニメ、ゲームなどで実在しない子どもを性的に描く表現に対する規制を考えるとする内容で、今年4月に出版された。
版元の勁草(けいそう)書房によると、本のほぼ1章分に相当する範囲で、別の著者の論文から許可なく引き写したとみられる表現が見つかった。出典の明示は一部にあったものの、質的・量的に本文が「主」であり、引用部分が「従」であるべき関係が逆転しており、引用とはいえず、「無断転載」にあたると判断。絶版・回収を11月28日に発表した。
渡辺氏は同日付の自身のブログで、「出版社側との編集過程における齟齬(そご)により、一部に無断転載と受け取られる記述が存在していたことが明らかになりました。当方と致しましては、無断転載の意図は一切ございません」などと説明した。東京都によると、渡辺氏は星槎大学大学院客員教授として、都青少年問題協議会の委員も務めている。(大内悟史)