歴史的な下げ相場を演じてきた米株式市場は、クリスマス休暇明けの26日、5営業日ぶりに急反発。ダウ工業株平均の上げ幅は史上初めて1千ドルを超えた。株価が底なしに下がる局面はひとまず収まったが、市場はわずかな材料にも神経質になっており、当面は荒い値動きが続きそうだ。
米国の株価は長く過熱感が指摘されてきたが、「暗黒のクリスマス・イブ」(米メディア)となった24日の急落で、ダウ工業株平均は先月末からの下落幅が3700ドル超に達していた。25日はクリスマスのため休場で、明けた26日の取引は、米大企業の利益水準に比べ売られ過ぎたとの見方が広がり、投資家は「クリスマス・バーゲン」(米アナリスト)に殺到した。
今年の年末商戦が好調だったことが示されたことも株価上昇を後押しした。マスターカードは11、12月の米小売業の売り上げが6年ぶりの伸びとなったと発表。米アマゾンも年末商戦の販売品数が過去最大になった。個人消費は米国経済の要で、最近の株安が冷や水を浴びせかねなかったが、底堅さが確認され、市場の不安が和らいだ。
前週からの株安を加速させていたのは、米トランプ政権の混乱だ。連邦政府の一部閉鎖やトランプ氏によるパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長への攻撃、ムニューシン財務長官による市場対策の失敗が重なった。パウエル、ムニューシン両氏の解任観測まで流れる始末だった。ただ、25日以降、トランプ氏がムニューシン氏を「信頼している」と評価するなど政権は火消しに努めている。
記録的な株価上昇となった米株式市場だが、投資家心理は不安定なままだ。「恐怖指数」と呼ばれる米国株の変動率指数(VIX)は24日も、先行き不安が強い状態とされる「20」を大きく上回り、30前後で動いた。
投資家が懸念する米中貿易摩擦は解決の糸口が見えず、世界的な景気減速懸念がくすぶり続けている。FRBは景気過熱を抑えるため、引き続き緩やかな利上げと資産圧縮を進める姿勢を維持しており、米経済が耐えられるのかに市場は神経をとがらせる。(ニューヨーク=江渕崇)