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甲子園最多勝の名将である前に、一人の野球好き。今年8月に智弁和歌山の監督を引退した高嶋仁氏(72)にとって、指導者としての48年間は野球を追究し続けた日々でした。高嶋仁という「ひと」と、野球を通じた「ひとの育て方」にインタビューで迫りました。
納得するまでプロに食いつく
甲子園見学で笑顔を見せる高嶋仁氏=2018年8月1日午後4時39分、阪神甲子園球場
《全日本野球協会などが1995年から開いている指導者のための講習会に行き、プロの技術を学んできた》
もう毎年のように行ってました。「なんでこんなところにおるんですか」って言われますけどね。ボールやバットの握り方から、肩の回し方まで、基本中の基本を教えてくれる。そりゃあ勉強になります。プロの技術というのは最高ですからね。それを高校生にもおろしてやらなあかん。
普段、自分のなかにもやもやしたものがあるわけですやん。皆の前では聞きませんけど、一対一になったときに質問するんです。
例えば内野手。プロは打者が打つ前に打球の方向に動いとるんです。普通ならファインプレーなんですけど、そう見せない。どう見てもおかしい、打つ前になんで走れんねんと思って。
それを阪神で監督してた吉田義男さんに聞いた。例えば僕が生徒にノックするじゃないですか。三遊間に打とうとして球をぱっと上げたら、ショートが打つ前に動くんで、「早すぎるやないか」って怒っとったんです。そしたら吉田さんは「怒ったらあかん」って。「あんたの姿が三遊間に打つ姿、打ち方をしとんのや」と。打者の全体を見とったら、ここに飛んでくるっていうのが大体わかるって言うんですよ。これがプロなんやって。それでやっと納得できた。だからプロは一歩早いねん。
打撃でもそうですよ。小早川毅彦って広島の4番打っとった選手に質問したのがね、内角の打ち方。脇締めてっていうのはわかるんですけどね、それでも納得いかんって話しとったら、「脇を締めるって言葉の使い方をもうちょっと変えたらいいんじゃないですか」って教えてくれた。「僕やったらボールの内側をたたけって言います」と。
《何歳になっても野球を学ぶ姿勢は変わらない》
プロの人に質問して、答えが返ってきたときに救われるんです。「やっぱり間違ってなかった、生徒にあほなこと教えてなくてよかった」って。プロが10年20年やってきた答えですよね。まあ、野球が好きなんで行っとるだけで。僕が思うのは、そういうところに行ったときに和歌山の監督が来とったら「このやろー」って思うけど、誰も来てないから、「よっしゃ、うちが甲子園出る。今年も行くぞー」って思ってましたけどね。
智弁和歌山の中谷仁・新監督と談笑する高嶋仁氏=2018年10月3日、和歌山市冬野
監督に向いてないって思う
僕はね、自分で監督には向いてないって思うとるんですよ。やっぱりコーチやなって。アドバイスする方が向いとるんちゃうかなって思うとるんですけどね。
《2007年夏の甲子園、日南学園(宮崎)―常葉菊川(静岡)戦での1球に、もやもやする気持ちが抑えられなくなった》
普通、自分の学校が甲子園で負…