中米のニカラグアで女子野球の普及をめざし、活動してきた日本人がいる。福島県いわき市出身の元球児、阿部翔太さん(27)だ。阿部さんが指導した女子選手4人が8日に来日し、日本の女子選手らと合同練習に取り組む。
ニカラグアはメキシコの南東方向にある、人口約600万人の国。阿部さんは青年海外協力隊員として、野球の普及を目的として2016年に派遣された。
阿部さんは福島・いわき光洋高、桜美林大で野球部に所属。16年10月からニカラグアのU12(12歳以下)、U18の代表選考などに携わり、17年、早稲田実の清宮幸太郎(日本ハム)らが出場したカナダでのU18ワールドカップには、ニカラグア代表のスタッフに加わった。
阿部さんによると、1970年代から90年代にかけて、大リーグで完全試合を達成するなど活躍したニカラグア出身のデニス・マルティネス投手の存在が、野球人気の火付け役になったという。現在はプロチームがあるほか、17の地区ごとに各世代のチームがある。
首都のマナグアでアカデミーを開いていた際、1人の少女から「私も野球がしたい」と相談を受けたことが、女子野球に携わるきっかけになった。「それまでニカラグアで野球は男子のスポーツとされていた。偏見が残るなかで彼女の思いに心を動かされた」
リュックに野球道具を詰めて、様々な学校で野球の授業を開き、女子向けの野球教室を実施した。2017年3月に女子のリーグ戦が始まり、全国放送もされた。現在は国内15チーム約200人の女子選手が野球をしているという。
現在、阿部さんはニカラグア国内の大規模な反政府デモの影響で帰国している。今回のニカラグア女子選手の日本訪問に向け、阿部さんはクラウドファンディングで資金を募った。その上、日本代表の橘田恵監督らの協力もあって来日が実現した。4選手は17日まで日本に滞在し、日本の女子プロ野球などと東京、埼玉、福島、大阪で合同練習をする。阿部さんは「支援して下さった方々のおかげで彼女たちは希望を持つことができた。20年女子野球ワールドカップ出場を目指し、世界一のレベルを誇る日本女子野球を学び、彼女たち自身でニカラグア女子野球を発展させることが目的」を話している。(坂名信行)