現場に残された数十年前の血痕でも個人の特定を可能に――。福岡県警科学捜査研究所の松村秀策(しゅうさく)研究員(37)が、血痕から採った血液に含まれる特定の遺伝子を解析することで、ヒトの血かどうかを判別することに成功した。保存状態が悪い血でも判別でき、将来的に未解決事件の捜査などでの活用が期待される。
現在の捜査では、採取した血に含まれるヘモグロビンなどを調べ、ヒトの血かどうかを判別する。その上でヒトの血だけをDNA型鑑定にかけ、対象のDNA型と照合して個人を特定している。ただ、時間が経っていたり、量が少なかったりした場合や、覚醒剤の成分が含まれていると、ヒトの血かどうかを正しく判別できない。
そこで松村さんが目を付けたのは、血中に含まれる遺伝子の一種「メッセンジャーRNA(mRNA)」だ。たんぱく質をつくるのに重要な役割を果たすmRNAの配列をみることで、ヒトの血かどうかを判別できることに気づいた。
研究者の間では「mRNAは壊れやすく、試料として使うのは難しい」とされていたが、意外にも時間の経過などで血が劣化しても壊れづらかった。今回の研究では、古いものだと37年前の血痕を判別できたという。ヒトの血を正確に判別することで、DNA型鑑定にかける試料を増やすことができる。
大学で薬学を学んだ松村さんは…