岩手県久慈市で掘り出された琥珀(こはく)から見つかり、「日本で唯一」とされてきたカマキリの化石が、実は別の昆虫だったことが箕面公園昆虫館(大阪府箕面市)の中峰空(ひろし)館長らの研究で分かった。現在はアフリカ南部のみに分布する昆虫だという。4日付で動物分類学の国際専門誌(電子版)に発表した。
久慈市は世界有数の琥珀の産地。カマキリとされたこの化石は2006年に白亜紀後期(約8600万年前)の地層から掘り出された琥珀の中に閉じ込められていた。当時は十分な時間がなく、詳細な鑑定が行えなかったという。
中峰さんらが今年4月から改めて調べたところ、触角や前脚の形状や羽の模様がカマキリとは異なっていた。文献を調べ、アミメカゲロウ目トガマムシ科の新種の昆虫と判明した。現在はサハラ砂漠以南に13種が分布している。白亜紀には今よりも広く分布していたことが知られているが、東アジアで見つかったのは初めてだという。
中峰さんらは、和名を「クジコハクトガマムシ」と命名。学名は、昆虫好きとして知られる俳優の香川照之さんに敬意を表し、本人の了解を得て「クジベローサ テルユキイ」と命名した。中峰さんは「国内には調査研究されていない昆虫化石が多くあり、これを機に研究が進めば」と話している。(小林舞子)