韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は10日、大統領府での年頭記者会見で、元徴用工訴訟の判決などで悪化する日韓関係について、主に日本の対応に問題があるとの認識を示した。具体的な解決策には触れなかった。双方は、日本が日韓請求権協定に基づいて9日に要請した協議をめぐって11日にも意見交換を始める方針だ。ただ、韓国側が協議に応じるかも含め、結論を出すまでには時間がかかりそうだ。
大統領会見に韓国内から批判 共通語は「ネロナムブル」
韓国・李首相「日本の指導者が反韓感情を利用している」
文氏は会見で、「日本の政治家が政治争点化していることは賢明な態度ではない。日本政府がもう少し謙虚な態度を示すべきだ」と語った。日本企業に元徴用工らへの損害賠償を命じた韓国大法院(最高裁)判決には、「三権分立で政府は介入できない。日本は判決に不満を表明できるが、仕方がないという認識を持つべきだ」とした。韓国内では、安倍晋三首相らによる最近の厳しい韓国批判に反発が広がっている。
文氏は、日韓慰安婦合意に基づいて設立された財団を解散するとした問題や、海上自衛隊の哨戒機が韓国軍艦艇に火器管制レーダーを照射されたとする問題には言及しなかった。
韓国は3月1日、日本統治時代の1919年に朝鮮半島で始まった独立運動から100年を迎える。対日感情がさらに悪化する可能性がある。韓国政府当局者は「安倍首相が大局的に判断しない限り、当面の首脳会談は難しい」と指摘。6月に大阪である主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)まで会談の機会はないとの見通しを示した。
文氏は会見で、北朝鮮の核開発などの影響で中断している開城(ケソン)工業団地と金剛山(クムガンサン)観光の両事業の再開を歓迎する考えを表明した。北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は1日、無条件で再開に応じる考えを示していた。昨年6月に続く2回目の米朝首脳会談が近づいているとして、米朝双方に歩み寄りを求めた。(ソウル=牧野愛博)