2020年東京五輪・パラリンピック招致で不正があった疑いで、フランス当局が日本オリンピック委員会(JOC)・竹田恒和会長(71)の本格捜査に乗り出した一件は、ほかの関係者への聴取が難航していることもあり、起訴に至るかの判断が長引きそうだ。
フランスでは予審判事による独自の捜査は年単位を要することがある。今回、手続き開始は昨年12月だ。
仏当局は竹田氏が理事長だった東京の招致委員会が13年7月と10月、シンガポールのコンサルタント会社「ブラック・タイディングズ(BT)」社に支払った計約2億3千万円の一部が汚職や資金洗浄に使われた可能性を疑っている。
BT社は当時、国際オリンピック委員会(IOC)委員で国際陸上競技連盟会長だったラミン・ディアク氏の息子、パパマッサタ・ディアク氏と関係が深いとされる。仏検察は、パパマッサタ氏が13年7月に腕時計などをパリで購入した際の約13万ユーロ(約1620万円)の一部をBT社が支払ったとみている。東京の招致が佳境を迎える時期で、それらが換金されて買収工作に使われたのではないか、との見立てだ。
パパマッサタ氏はリオデジャネイロ五輪招致でも、自身の関連会社にブラジル人実業家から2億円強が振り込まれ、リオの集票工作に関わったとされる。リオなどの件で国際刑事警察機構(インターポール)を通じて国際手配されているが、セネガル政府が引き渡しを拒否している。IOCはバッハ会長がセネガルの大統領に捜査への協力依頼の文書を送っているが、進展は見られない。(ロンドン=稲垣康介)