「墓を継ぐ家族がいない」「管理が楽で費用も安い」――。多くの人たちの遺骨を一緒に埋葬する合葬墓が、大都市圏の公営墓地で広がっている。中には生前予約を求める住民が殺到するケースも。「多死社会」を迎え、弔いのかたちも変わりつつある。
「このまま何も手を打たなければ、対応できないと思った」と川崎市霊園事務所の菅原久雄所長(51)は話す。今春、市営緑ケ丘霊園に2万体の遺骨を納める合葬墓が完成する。
約2億円の整備費をかけた。使用料は、個別に埋葬する最小区画(4平方メートル)が100万円なのに対し、合葬墓は10万円。墓石代もかからない。
川崎市は高度成長期に人口が急増。現在は151万人余りに上る。市によると、市内の年間死亡者は2015年の約1万1千人から25年に約1万4千人に増え、過去最多となる。市営墓地に新たな墓を求める希望者を推計すると、1年間に平均1千基近くの墓が必要になるという。しかし、市営2墓地は1カ所が区画の新規募集を停止。もう1カ所も18年度の募集は104区画にとどまる。
緑ケ丘霊園には2万体余りの遺骨を一時的に預かる納骨堂がある。多くは遺族が墓を探しているもので、市は合葬墓を受け入れ先の一つと位置づける。19年度から合葬墓の受け付けを始めるが、菅原所長は「申し込みが多ければ、合葬墓をもっと造ることも検討しないといけない」と話す。
東京ディズニーリゾートがある千葉県浦安市。東京湾に面した埋め立て地に15年、市営の樹林墓地を造った。最大で5千体の遺骨を埋葬できる合葬墓だ。墓参者には「おまいりくん」と名付けたタブレットを貸し出す。検索すると、墓石代わりに故人の名前や命日を表示。遺骨の埋葬地点も画面上で紹介する。
市環境衛生課の槇(まき)伸一…