3月29日に欧州連合(EU)から離脱する英国の議会下院で15日夜(日本時間16日朝)、円滑な離脱に向けた協定案の採決があり、賛成202、反対432の大差で否決された。これを受け、メイ首相は英議会の3開会日以内に代替案を示すことになる。政権も議会の多数派も、混乱を招く「合意なし離脱」は避けたい意向だが、打開策は見いだせていない。離脱の先行きはますます見通せなくなった。
協定案は、離脱から2020年末までを移行期間とすることや、在英、在EUの双方の市民が引き続き社会保障を受給する権利を認めることなどを定めたもの。昨年11月に、英国とEUが合意していた。スムーズな離脱に欠かせず、3月末までに英・EU双方の議会が批准手続きを終えなければ、「合意なし離脱」となる。
協定案で特に反発が強かったのが、英領北アイルランドをめぐる「非常措置」だ。地続きのEU加盟国アイルランド共和国との間で人と物の自由な往来を続けるため、通商協定などの解決策が用意できない限り、英国全体が将来にわたりEUの関税ルールに従うという内容。与党・保守党内でも、EUの規制やルールから早く逃れて「主権回復」をしたい強硬離脱派が反発、最大野党・労働党などと共に反対に回った。
合意なし離脱では、英国とEUの間の鉄道や国際便の運行に支障が出たり、物流が停滞したりして、市民生活や経済が大きく混乱すると予想されている。経済界を中心に「最悪のシナリオ」とされてきた。EU側もこれは避けたいのが本音で、英国とEUの双方から、離脱の先送りはやむを得ないとの見方も出てきている。(ロンドン=下司佳代子)