英議会下院で15日、欧州連合(EU)からの離脱協定案が否決されたことを受け、この協定案に反対してきた強硬離脱派と残留派の双方の市民から歓迎の声が上がった。だが、このまま「合意なし離脱」となれば、進出する日本企業を含め、混乱は必至。英経済界やEUなどはいらだちをあらわにし、英政権に早急な対応を求めている。
英議会、EU離脱協定案を否決 反対432・賛成202
英議会前の広場で開かれたEU残留派の集会。大型画面で反対票が432票に上ったと伝えられると、歓喜に包まれ、再度の国民投票を求めるかけ声に変わった。約100メートル離れた場所に陣取った離脱派も「EUから押しつけられた協定案でなくてよかった」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。メイ政権がEUとまとめた協定案は、離脱・残留両派から批判を浴びてきたため、双方とも「否決」を歓迎するという皮肉な結果となった。
周辺では両派が鉢合わせに。数十人の離脱派が残留派に対し「君らは敗者だ」と言葉を浴びせると、残留派が「離脱派の言っていることはウソで、民族主義者の主張だ」と応酬し、警官隊が割って入った。
英経済界からは結果を憂慮する反応が相次いだ。英経営者協会のマーティン事務局長は声明で「3月29日に離脱すると法律で決まっているのに、議員はいくらでも時間があるかのように振る舞っている。混乱の中でどうやって企業は準備するのか」と訴えた。
金融街シティーの行政機関「シティー・オブ・ロンドン・コーポレーション」のマクギネス政策責任者は「金融の安定が、いちかばちかの政治のポーカーゲームで危険にさらされてはならない。全ての政党の政治家は『合意なし離脱』を避けるため、現実的な方法で協力しなければならない」。英商工会議所も「政府と議会の最優先事項は『合意なし離脱』が企業や社会にもたらす危険を避けることだ」と訴えた。(ロンドン=杉崎慎弥、河原田慎一、寺西和男)
■いらだち…