英国政府が欧州連合(EU)と合意した離脱協定案を、英議会は15日に否決した。メイ首相も大半の議員もEU側も「合意なし離脱」は避けたいが、残された時間は少ない。一方、EU側は立場が定まらない英国にいら立ちを募らせており、再交渉に応じたとしても大幅に譲歩する可能性は低いとみられる。
離脱・残留両派が歓迎、皮肉な「否決」 英の離脱協定案
「オーーーッ!」
15日夜、英議会前。英議会が協定案を否決すると、残留派、離脱派の双方から歓声が湧き起こった。ところがその後、メイ氏が否決された協定案の代替案を示すと断言すると、両派ともに落胆の声に変わった。
残留派には国民投票を再度実施して、民意を問うべきだとする意見が目立つ。
無職のレイチェル・マペインさん(67)は「離脱は経済的に大損害をもたらすとわかった。本当に離脱に走っていいのか、もう一度投票で決めるべきだ」と強調した。建築家のエマニュエル・マグカリスさん(41)は「3月のEU離脱へ着々と進むのではと心配している。メイ氏は辞職し、総選挙で民意を問い直してほしい」と話した。
一方、離脱派は英国旗を掲げ、即時離脱を訴える。金融業のエドワード・ファーマーさん(59)は「中小企業にとっては、EUとの合意なしでも離脱した方がメリットがある」と語る。政府が国民に説明する「合意なし離脱がもたらす経済損失」は、「残留派のシンクタンクの考えだ」と主張。国民投票の再実施については、「そんなことをすれば、英国の民主主義は死んでしまう」と否定的だ。
EU側は否決された協定案が「英国とEUが公平に譲歩した最善のもの」(ユンケル欧州委員長)として、英国との再交渉については慎重な姿勢だ。EU側には「合意なし離脱になれば、ダメージが大きいのは英国の方だ」との考えも強い。再交渉に応じたとしても、大幅に譲歩する可能性は低いとみられる。
立場が定まらない英国へのいら立ちも募っている。英議会の否決から一夜明けた16日朝、欧州議会ではウェーバー議員(ドイツ)が「英国の政治家に言いたい。(EUに)求めているものは何なのか、教えてほしい」と訴えた。(ロンドン=杉崎慎弥、河原田慎一、ブリュッセル=津阪直樹)
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