タイの選挙管理委員会は23日、軍事政権からの民政移管に向けた総選挙を3月24日に行うと発表した。2014年5月のクーデターで実権を握った軍政は選挙の先延ばしを繰り返してきたが、ようやく実施にこぎつけることになる。
タイの総選挙は11年7月以来、約8年ぶり。クーデター前の14年2月にも総選挙があったが、憲法裁判所が無効と判断している。
この日は、ワチラロンコン国王が総選挙実施を命じる勅令を出し、その後に選管が会議を開いて日程を決めた。2月4日から8日まで各党の候補者や首相候補の登録が行われ、投票から60日以内に選管が小選挙区の95%の結果を確定。それから15日以内に新首相指名のための国会を招集する。
軍政は先月、2月24日投票を前提に行程表を各政党に示したが、国王の戴冠(たいかん)式が5月上旬に決まったことを受け、関連行事と選挙後の政治日程が重なるとして選管に再考を求めていた。
勅令を受け、選挙運動も解禁された。総選挙では軍政のプラユット暫定首相が親軍政政党・国民国家の力党の支持を受け、正式に首相の座に就くことを目指すとみられている。これに反軍政のタクシン元首相派が対抗。クーデター時に野党第1党だった民主党など双方に距離を置く勢力も加わり、三つどもえの戦いになりそうだ。
世論調査では、農村部や都市の貧困層の支持を受けるタクシン派のタイ貢献党が首位を走り、親軍政政党はプラユット氏を「再任」するのに十分な勢力を確保できていないとの見方も多い。軍政が2月24日としていた総選挙を先延ばししたのは「親軍政政党に少しでも準備期間を与えるため」との批判も出ており、反発するデモも起きていた。(バンコク=貝瀬秋彦)
タイ総選挙をめぐる主な動き
2014年5月 軍がクーデターでタクシン元首相派の政権を覆す
2014年8月 プラユット陸軍司令官(当時)が暫定首相に
2017年4月 新憲法施行
2018年12月 政治活動を全面解禁
2019年1月 選管が総選挙の日程を決定、選挙運動解禁
3月 総選挙