南米大陸最高峰アコンカグア(標高6961メートル)の登頂とスキー滑降をめざしていたプロスキーヤー三浦雄一郎さん(86)が遠征を終えた。ドクターストップで断念した目標は次男豪太さん(49)がともに達成した。そして、「90歳でエベレスト」を宣言した三浦さん。その夢をかなえるため、親子は新たに、ある共通の目標を掲げた。
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三浦雄一郎さん「次があると受け入れた」登頂断念で会見
遠征22日目を迎えた現地時間23日午前8時半。遠征隊が滞在先にしているアルゼンチン・メンドサ市内のホテルのレストランで、テーブルにつく三浦さんと、眠そうに起きてきた豪太さんが握手を交わした。
「ゴン(=豪太)、おめでとう、よくがんばったよ」「大変な山だったよ。どうにか登ってきました」
20日午後以来の親子の再会だった。この日、同行していたチームドクター大城和恵さん(51)が三浦さんにドクターストップの判断をし、下山となった。
だが、当初は三浦さんは応じようとしなかった。
豪太さんは必死に説得した。「お父さんの気持ちだけ頂上に行っても、体が死んでしまったら、残された僕たちはどうなるの?」。涙ながらの訴えを父は最後は聞き入れた。そしてヘリコプターで下山となった。
一方、山に残ることは豪太さんにとっては葛藤があった。父に「下りよう」と言う以上は一緒に下山するつもりだった。
だが、父の言葉が頂へと向かわせた。「ここまで来たのだから、上まで行きなさい」。初登頂に向けて歩みを進めることを決めた。
翌21日。標高差約1400メートルを1日で往復するハードな日程だった。パーティーは、この時点でアコンカグアに12回登頂歴のあった登攀(とうはん)リーダー倉岡裕之さん(57)、優れた登山家に贈られるフランスのピオレドールを受賞した平出和也さん(39)と中島健郎さん(34)という山のエキスパート3人と自分。豪太さんにはプレッシャーだった。
出発は未明。吹き付ける強い風の中、順調に登る豪太さんだったが、三浦さんが、その歩きにくさから「アリ地獄のようだ」と表現していた山頂直下の斜面で異変が起きた。
手足がしびれ、動悸(どうき)…