昨年11月の雨降りの金曜日。東京駅前のビルの貸しフロアに、滋賀県東近江市から上京してきた八つの事業者が集まった。洋菓子店、建具、鉄工、金属加工など職種はさまざまだが、いずれも黒字だ。この商売上手の「近江商人」たちには共通点があった。後継者がいないのだ。
そのうちの1人、奥山進さん(79)は東近江市内の4千平方メートルの畑で、唐辛子を種から無農薬で育てる。自社で加工し、高級料理店や百貨店に出荷している。
東京や関西で「京都つゆしゃぶCHIRIRI(チリリ)」を展開するひょうたんや(滋賀県近江八幡市)には、ゆず唐辛子にして納めている。おかみの中嶋弓子さんは「名脇役の奥山さんの唐辛子なしに、うちのつゆしゃぶは考えられない」。
奥山さんは品種選びや土づくり…