将棋界は今、八つのタイトルを7人で分け合う戦国時代。今後の将棋界の行方(ゆくえ)を左右するかもしれない大勝負が、1月31日(木)、大阪市福島区の関西将棋会館で指される。佐藤天彦(あまひこ)名人への挑戦権をトップ棋士10人が争う「将棋名人戦・A級順位戦」(朝日新聞社、毎日新聞社主催)の8回戦。挑戦の可能性を残す3棋士のうち、羽生(はぶ)善治(よしはる)九段と豊島(とよしま)将之二冠=王位、棋聖=とが直接対決する。昨年末の竜王戦七番勝負で3勝4敗で敗れ、27年ぶりに無冠になった48歳の羽生九段が「復活」へ向けて、前進するのか――。それとも、現在の将棋界ではただ一人、複数冠を保持する28歳の豊島二冠が、三冠目の挑戦権に近づき、棋界統一に一歩近づくのか――。将棋界の世代交代の流れに、ベテランが待ったをかけるのか、それとも、若手が強さを示すのか、という見方も出来る。この8回戦で挑戦者が決まることはないものの、3月1日に静岡市で5局一斉に指される最終9回戦に向け、両者にとって重要な意味を持つ一局なのは間違いない。
◇
この対局を含めたA級順位戦の8回戦の全5局が、この日、東京都渋谷区の将棋会館と関西将棋会館で一斉に指される。
8回戦の組み合わせは、以下のとおり。
(棋士の氏名の前のマル囲み内の数字は、前期成績に基づく今期A級順位戦での順位。氏名の後のマル括弧内は、今期A級順位戦の成績)
【大阪】
①羽生善治九段(6勝1敗)―⑥豊島将之二冠〈6勝1敗〉
⑤久保利明王将(3勝4敗)―⑧三浦弘行九段(3勝4敗)
【東京】
⑦深浦康市九段(1勝6敗)―③広瀬章人竜王(6勝1敗)
④佐藤康光九段(4勝3敗)―⑨糸谷哲郎八段(4勝3敗)
②稲葉 陽八段(2勝5敗)―⑩阿久津主税八段(0勝7敗)
◇
挑戦の可能性があるのは、6勝1敗の羽生九段、広瀬竜王、豊島二冠の3人だけ。
羽生九段は8回戦で豊島二冠と、最終9回戦では広瀬竜王と対局する。仮に羽生九段が豊島二冠、広瀬竜王に連勝すれば、競争相手に黒星をつけながら、自分だけ1敗をキープすることになり、プレーオフ無しでの挑戦権獲得となる。
豊島二冠は8回戦で羽生九段と、最終9回戦では久保王将と対局する。仮に豊島二冠が羽生九段、久保王将に連勝すれば、自らは1敗をキープしながら、羽生九段に2敗目となる黒星をつけ、広瀬竜王の成績次第だが、少なくともプレーオフに進出する権利を得る。
広瀬竜王は8回戦で深浦九段と、最終9回戦では羽生九段と対局する。仮に広瀬竜王が深浦九段、羽生九段に連勝すれば、自らは1敗をキープしながら、羽生九段に2敗目となる黒星をつけ、豊島二冠の成績次第だが、少なくともプレーオフに進出する権利を得る。
もちろん、上記以外にも、いろんなシナリオが有り得るが、いずれにせよ、8回戦の結果次第で、挑戦権の行方が大きく左右されることは間違いない。
特に、6勝1敗者同士の羽生九段-豊島二冠の対局が注目を浴びそうだ。特にファンの多い両棋士のことでもあり、ますます好局、熱戦への期待は高まる。
一方、B級1組へ降級する2人のうち、1人は阿久津八段で決定済み。もう1人の降級者は、深浦九段、稲葉八段、三浦九段の3人のうち誰かに絞られている。こちらも、各棋士のファンは気がかりなことだろう。
◇
日本将棋連盟関西本部(大阪市)は、1月31日午後6時から終局まで、関西将棋会館(JR福島駅徒歩約5分)で大盤解説会を予定している。
関西将棋会館での大盤解説会に登場するのは、福崎文吾九段、安用寺孝功六段、西川和宏六段、室田伊緒女流二段。
料金は、一般2千円、など。
解説会は、全5局が終局するまで行われる予定。
A級順位戦は、午前10時に対局開始予定で、持ち時間は各6時間。日本将棋連盟関西本部は「解説会の終了時刻は終電の時刻を過ぎると思われますので、お帰りの方法などをご考慮の上、ご来場ください」としている。
問い合わせは関西将棋会館道場(06・6451・0220)。(佐藤圭司)