入院の形態や患者数、期間など精神科病院の状況を知る基礎資料となる「精神保健福祉資料(630調査)」の情報が全国の自治体で相次いで非開示になっているとして、これまで通りの情報開示を求める集会が12日、参院議員会館で開かれた。全国から約100人が参加した。
630調査は厚生労働省が毎年6月30日時点の精神科病院の状況を調べているもの。これまで各地の市民団体が都道府県などに情報開示請求し、それらの情報をもとに冊子などを作り、患者や家族が病院を選ぶときの参考にしてきた。
ところが、集会参加者によると、2018年度調査について、東京都や神奈川県、大阪府、大阪市、兵庫県など少なくとも20自治体でこれまで開示されていた情報が非開示になっているという。「個人情報の保護」や「公にしないことを条件に任意に調査したため」などが理由とされているという。
630調査をめぐって厚労省は昨年7月、都道府県への協力依頼文書に「個々の調査票の内容の公表は予定しておらず、その集計結果のみを公表する予定」「(精神科医療機関に対して)その旨を明示した上で協力を求めること」などの文言を入れた。また、昨年10月には日本精神科病院協会の山崎学会長が「患者の個人情報保護について責任をもつ立場の精神科病院としては必要な措置が行われない場合は、630調査への協力は再検討せざるを得ない」などとする声明を発表している。
集会に参加した認定NPO法人大阪精神医療人権センターの壬生明日香さんは「精神科病院は閉ざされているから人権問題が起きやすい。だから扉を開いていく活動が大切。そのためには情報公開は必須だ」と訴えた。集会を主催した杏林大学の長谷川利夫教授は「630調査は患者の個人情報は含まれていない。今回の動きは、個人情報保護の名目で精神科病院の情報を隠すもので、国民の利益を損なうものだ。第2の統計問題と言える」と話している。
厚労省精神・障害保健課の大鶴友博課長補佐は「依頼文書はこれまでの考えを明確化しただけだ。情報開示についてはあくまでも自治体が判断するものと考えている」としている。(編集委員・大久保真紀)