米中の高官級による通商協議が14日、北京市で始まった。3月1日の交渉期限を前に、中国が知的財産の保護などにきちんと取り組んでいるか監視する仕組みについて、15日まで詰めの協議をする。中国の内政に深入りする協議になるが、うまくいけば、両国首脳が近く再度会談し、通商紛争の解決に一定の道筋が見える可能性がある。
今回の協議には、米国からライトハイザー通商代表とムニューシン財務長官が、中国からは劉鶴(リウホー)副首相が出席。14日朝、交渉に向けて宿舎を出発する対中融和派のムニューシン氏は「楽しみだ」と述べた。両国は11日から次官級協議を続けており、トランプ米大統領は13日、「交渉はうまくいっている」と話した。
米政権が中国に仕掛けた「関税合戦」への批判は米国内でも根強い半面、中国による知的財産の侵害など「構造問題」の解決を求める声は、米議会や産業界で立場を超えて広がっている。
ただ、「ディール(取引)を成し遂げた」という政治的成果を得ようと焦る最近のトランプ氏は、交渉をまとめる方向に傾いている。その結果、景気減速を恐れて「早期の妥結」を目指す中国側と共鳴するねじれた展開になっている。
トランプ氏は7日、3月1日までの交渉期限内に習近平(シーチンピン)国家主席と会談するとの意向を撤回。しかし、12日には記者団に「真のディールに近いところまでいけば、ちょっとだけ期限を延ばしてもいいかも」と述べ、3月1日を「動かせない期限」としてきた政権の立場をうやむやにした。
米側は、制裁関税の「第3弾」として昨年9月から2千億ドル(約22兆円)分の輸入品に10%の関税を上乗せしている。今回、合意に至らなければ3月2日から25%に税率を引き上げる、との脅しで譲歩を迫ってきた。しかし、経済専門家も今回の税率の引き上げは見送るとの見方が大勢だ。米ブルームバーグ通信は14日、トランプ氏が交渉期限を60日延長することを考えていると報道した。
トランプ氏が示した譲歩の姿勢…