サウジアラビアのムハンマド皇太子が17日、パキスタン、インド、中国の3カ国への外遊を始めた。昨年10月にトルコの自国総領事館で起きたサウジ人ジャーナリスト殺害事件への関与が指摘されて欧米との関係がぎくしゃくするなか、友好国を訪れ存在感をアピールし、自らの権威を回復する狙いがあるとみられる。
【特集】事件の経緯は、王室の関与は…サウジ人記者殺害疑惑
ムハンマド氏は17日にパキスタンのイムラン・カーン首相と会談。エネルギーや農業など200億ドル(約2兆2千億円)の経済協力で合意した。ロイター通信によると、財政難が深刻なパキスタン側は、皇太子搭乗の航空機を戦闘機でエスコートするなどして歓迎。カーン氏は「サウジはいつも困っているときに助けてくれる」と持ち上げた。
カーン氏は記者殺害事件直後の昨年10月下旬に開かれた皇太子肝いりの国際会議でも、各国の政財界幹部らが相次いで欠席するなか、予定通り登壇して友好関係を演出していた。
インドのモディ首相と中国の習近平(シーチンピン)国家主席も、昨年11月末からアルゼンチンで開かれた主要20カ国・地域(G20)首脳会議で、サウジに厳しい姿勢の欧米と対照的に皇太子と会談。習氏は皇太子主導の経済構造改革などを「固く支持する」と表明した。今回の両国への訪問でも経済協力を打ち出すとみられる。(ジブチ=高野裕介)