子どもへの性犯罪を防ぐため、福岡県議会がつくった性犯罪の元受刑者に住所の届け出義務を課す条例案は、2012年10月に全国で初めて施行された大阪府条例をモデルにした。府が今年1月に公表した施行5年半の運用状況によると、住所などを届け出たのは計121人。このうち支援を受けたのは4割の49人だったが、府による支援を受けている期間中に関しては、再犯を犯した人を確認していないという。
性犯罪元受刑者に住所届け出義務 福岡県が条例案可決へ
府は、元受刑者から住所などの届け出を受けて、法務省に照会し、確認作業を行う。届け出がなければ住所の把握はできない。大阪とその周辺の刑務所や保護観察所で昨年1~6月に刑期を終え、届け出対象となった元受刑者を調べたところ、届け出た率は63%だった。条例では届け出をしない元受刑者には、5万円以下の過料という罰則もあるが、適用例はない。
府は、社会復帰支援のために事務局4人、臨床心理士など専門の支援員7人の計11人態勢を組む。住所を届け出た人を訪問。希望者には、加害者向けにつくったカウンセリングプログラムを無料で実施し、就職活動などに必要な情報提供や関係機関への紹介を行っている。
支援を受けた49人について、カウンセリング期間中は再犯していないと確認できているが、終了後は把握できていないという。
届け出たものの、支援を一度も受けていないのは72人。「仕事などで忙しい」のほか、「カウンセリングに効果があるとは思えない」「行政が信用できない」といった制度への不信感、「相談するほど困っていない」という理由を挙げる人が多かったという。
府治安対策課の担当者は、「届け出対象者全体の状況はわからない」と述べたうえで、少なくとも支援を受けている間は再犯が確認されていないことから、条例に基づく支援制度について「有効性は確認できた」とした。(渕沢貴子)