インド洋の島国モルディブの検察は18日、大統領在任中に中国との関係を深め、昨年の大統領選で落選したヤミーン前大統領を逮捕した。在任中のマネーロンダリング(資金洗浄)罪で在宅起訴され公判中だったが、証人を買収しようとした疑いがあるという。ヤミーン氏側は「政治的な魔女狩りだ」(弁護士)と反発している。
モルディブ大統領、初の外遊先はインド 中国離れ鮮明
地元報道によると、ヤミーン氏は政府系組織から公金100万ドル(約1億1千万円)をリゾート開発を行う民間企業を通じて自身の口座に振り込ませた疑いが持たれている。検察は13日にヤミーン氏を起訴したが、同氏は嫌疑を否認している。
検察は今回、この裁判の過程でヤミーン氏が自らに不利な証言を撤回させようと証人らの買収を試みたとして逮捕に踏み切った。ヤミーン氏の身柄は首都マレ近くの島の拘置所に移されたという。
ヤミーン氏は2013年に大統領に就任し、中国が提唱するシルクロード経済圏構想(一帯一路)に賛同。多額の資金を中国から受け入れ、橋や住宅の建設など大規模なインフラ整備を進めた一方で、野党やメディアへの弾圧を強めた。だが、昨年9月の大統領選で野党統一候補のソリ氏に敗北。ソリ氏は大統領就任後、「中国依存」を改め、インドなどを重視する方針に転換している。
モルディブでは4月に総選挙が予定されている。ヤミーン氏の弁護人はインドメディアに「逮捕が選挙前に行われることが(現政権にとって)重要なのだろう」と述べ、捜査には政治的な背景があると批判した。(ニューデリー=奈良部健)